techghost

【第012回】ピクサー社で働くということについて(全文テキストあり)

ピクサー受付


Pocket

Pixar Animation Studiosの手島さんとピクサー社での仕事について話しました。

お品書き:

  • Berkeleyは吉田寮である
  • 分かりやすいコードを書く
  • 専門性を持った人達がそれぞれの待遇で働く職場
  • 仕事に対する迅速なフィードバックが次のモチベーションを生む
  • ITな会社が西海岸に集まる理由
  • マネタイズされないものへの理解とその効果

光画部時間とは
http://goo.gl/2MKLa

OpenSubdivポータル
http://graphics.pixar.com/opensubdiv/

ピクサー写真ギャラリー
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.387955651272547.86008.128520823882699&type=3

【オープニング】

長谷川:皆さんこんにちは、ピープルデザイン長谷川です。本日のゲストも手島さんです。

手島:よろしくお願いします、手島です。

長谷川:よろしくお願いいたします。手島さんが働いていらっしゃる建物の(前で)。

手島:そうですね。

長谷川:…すぐの所でコーヒーを(いただいています)。無料ですかこれ。

手島:コーヒーは無料なんです。

長谷川:(笑)。

手島:ごはんは無料じゃないんです、残念ながら。

長谷川:コーヒーをいただきながらお話をしているという感じです。どんな一日の過ごし方、モデルケースみたいなものをお話しいただけるといいかなと思っているんですけども。

手島:そうですね、私は今バークレーの北のほうに住んでまして、会社から車で20分くらいの所なんですよ。

長谷川:バークレーは大学のある町ですよね。

手島:そうですね、UCバークレーがあります。すごいリベラルというか、何でしょうね、変な人がいっぱいいますね。

長谷川:(笑)。変な人?ラリってるということですか?

手島:まあ、近いですけど。僕、京都大学出身なんですけど、京都大学に吉田寮っていうすごいヒッピーの集う不思議な大学の学生寮があって、すごいそれが似てるんですよ雰囲気が。なんかちょっとこう、いっちゃってるような人たちが集まってるような。

長谷川:バークレーは吉田寮に似てると?

手島:そう、吉田寮に似てると。すごい巨大な吉田寮だと僕は自分の中で思ってます。僕はその中でも北のはずれのもっと上品な場所に住んでるんですけど(笑)。

長谷川:なるほど。

手島:小さい子どもが2人いまして、子どもが今こっちのインターナショナルスクールに通っているので、朝大体6時半とかに起きて子どもを学校に送り届けて、そのあとそのまま会社に出社してますね、8時くらいですかね。

長谷川:8時くらいに会社に到着すると。

手島:会社の同僚も8時から9時くらいにポツポツみんな出てくるという感じです。この辺は普通の日本と同じような感じですけどね。ちょっと早いかな。

長谷川:まあ日本では8時というとサラリーマンの人は電車に乗ってる時間ですね。

手島:こっちはやっぱり車通勤なんですよ。すごい高速道路が渋滞するんで、人によってだいぶシフトしてもっと早く来てる人もいますし。

長谷川:なるほど、早め早めで動く人もいれば、ちょっとゆっくり(来る人もいる)。

手島:基本的アメリカ人は朝早いですから。

長谷川:そうですよね。意味わかんないくらい朝から甘いパン食べてる人いっぱいいますからね。

手島:いやあ、不思議な。会社はごはんは有料なんですけど、それ以外にフルーツとかシリアルバーとか、そういうのは自由に食べていい所があって、みんな朝会社に来てごはん食べたりとか。ベーグルとかオートミールとか食べてますね。

長谷川:朝来て、朝ごはん食べて。

手島:そうですね。

長谷川:手島さんは朝ごはんは?

手島:僕は朝は家で子どもたちと一緒に。

長谷川:なるほど。一応、和食ですか。

手島:ほぼ和食ですね。結構西海岸は日本食材が手に入りやすいんですよ。日本食マーケットとかもあるんで、アジの開きとかサンマとか売ってますし、普通に焼いて食べます。

長谷川:朝から納豆とか。

手島:納豆とか食べてますね。

長谷川:純和食な食事をして。

手島:かなりピュアに和食。

長谷川:当然みそ汁も飲んで、8時に会社に来ましたと。

手島:そうですね。8時に来てメールとかチェックして、最近ちょっとサボってますけどチームで働いていまして、部署は100人くらいの部署なんですけど、3~4人くらいのチーム毎に働いてるんですよ。そのチーム内でスタンドアップミーティングって言って、今日は何しようとか、昨日まで何が問題だったとかっていう簡単な確認会を大体10分から長くても30分くらいやります。

長谷川:それはやっぱり立ったままやるから(スタンドアップミーティング)?

手島:いやスタンドアップミーティングって言うくせに座ってやるんけれど(笑)。

長谷川:(笑)。

手島:不思議なんですけどね。

長谷川:よく「かかとを上げたまま打ち合わせする」みたいのありますよね。

手島:そうそう。意気込みはそういう意気込みでやりますね。そのときにバグトラッカーとかあって、プライオリティの高いバグとかを一応みんなでスキャンして、今日はこれやろうかっていう感じで。

長谷川:そんな形なんですか。

手島:そんな感じですね。

長谷川:今日はこれやる、みたいな。でも決まってるときもあれば、自分で決めてるときもあれば。

手島:もちろん大体の流れはあるんですけど、でも一応この人は何をやってるというのがみんなでシェアできるように。それが終わったらすぐコーディングとかに入っちゃいますね。

長谷川:いきなりなんですね。「これやるか」って決めたものをいきなりやって。

手島:まあ途中ミーティングが入ったりもしますけど、お昼までは大体そんな感じで仕事。

長谷川:打ち合わせとかって1日、何回くらい?

手島:僕はわりと入ったばっかりなんであんまりないんですけど、やっぱりリーダー職の人とかは打ち合わせだらけでちょっとかわいそうな。

長谷川:その辺はあまり日本と変わらないんですね。

手島:そうですね。

長谷川:なるほど。そんなことでお昼まできました。お昼っていうのは?

手島:お昼はもう、こちらのカフェで。ピクサー社内に2つカフェがあるんですけど、どっちも大きなカフェなので、そこでごはん食べます。

長谷川:ちょっと見ると、あれビュッフェ?

手島:ここはサラダバーで、ヘルシーな食事が多いですね。長谷川さんちょっと見たらわかるかもしれないですけど、アメリカ人なんですけど、あまり太ってる人いないじゃないですか。

長谷川:そうなんですよ。さっきいましたどね(笑)。

手島:時々いますけどね。やっぱりテックカンパニーで働いてる人たちはヘルシー志向の人が多いですよね。

長谷川:そうですね、確かに。それでお昼ごはん食べて、また仕事に戻るみたいな。

手島:そうですね。午後からはまたミーティングが、午前中よりはちょっと多めにあったりしますけど、でもそれぞれのミーティングは長くても大体30分くらいなんです。みんな時間どおり始めて、時間になったらとにかく終わっちゃう。

長谷川:なるほど。時間どおりに集まらなくて、定刻どおりに終わらないっていう。

手島:ということはないですよね。

長谷川:よくある日本の風景みたいな。オラクルタイムっていう用語があって。。。

手島:光画部時間みたいな感じですよね。

長谷川:時間が歪むんですよ。

手島:わかります。僕の前の会社は結構やんちゃな会社、やんちゃっていうか自由会社だったんで「10時からミーティング出て」って言っても、その10時が夜の10時だったりするんです。締切の前になってくると、もうみんな平気で徹夜とかするんで「2時に集まろうか」って言うと、みんな「2時ってどっちかな?」みたいな。結構真剣に心配してたんです。それはそれですごい楽しかったんですけど。
もうさすがにそんなことはないですけども、午後はずっとそんな感じで、人によりますけど大体5時6時になるとみんな帰って行きますね。

長谷川:仕事によっては、例えばリリース間近であるとか。

手島:もちろんクランチタイムって言って、忙しくなってくるとワーキングディナーとかになってて、そのあと8時くらいまで働いてる人たちはいます。本当に忙しいときは土曜日に来て働いてることもありますけど。でもまず日曜日は休みですね。

長谷川:やっぱり働きずくめっていうのは、文化としてないんですかね。

手島:そうですね。ただ意外とみんなプライベートタイムにも会社のメールちょこちょこチェックしてますし。やっぱりiPhoneとかみんな。ほぼ全員iPhone持ってますけど(笑)。

長谷川:そうですよね。ここでAndroid使う人いないですよね。

手島:たまにいるんですけど。

長谷川:たまにいるんですか!

手島:すごい会社的にもよくサポートされてて、VPNとかで気軽に会社のメッセージにアクセスできるんで、みんな夜でも「問題があったらすぐ返事して」みたいなことやってます。わりとそこは、会社によって違うと思いますけど、曖昧にみんなやってますね。

長谷川:仕事をする時間というのとプライベートというのを完全に切り分けてしまう人もいれば、ちょくちょくメール見ますという人もいるんで。

手島:本当に人によります。

長谷川:やっぱり忙しくなってくれば柔軟に対応しますよって、そういう感じなんですかね。

手島:そうですよね。

長谷川:もし聴かれてる方でピクサーに来られるチャンスがある方がいたら、ぜひこのカフェに来てみてください。ものすごくいい雰囲気です。

手島:のんびりしてますね。

長谷川:このオフィスの敷地自体が大学みたいな感じですよね。だからすごくいい所で、西海岸らしい天気の良さを感じられるので。

手島:今日は本当、素晴らしい天気です。まあ毎日こうですけど(笑)。

長谷川:わかりました。本編のほうを進めていきたいんですけども、何の話に…。

手島:今ちょっと話しちゃいましたけど、仕事の進め方とか、どんな仕事やってるかとかを簡単に紹介できたら。

長谷川:そうですね。ピクサーという会社がアニメーションを作っているっていうのはみんなわかるんだけども、手島さんがどういうことをやってるのかを中心にお話を伺うような感じでよろしいでしょうか。

手島:はい。

長谷川:それでは本編はじまります。

手島:よろしくお願いします。

【本編】

長谷川:いきなり仕事の話とういうのもアレなので、簡単に手島さんが使ってらっしゃるPCというかパソコンというか、Macですよね。

手島:MacとLinuxなんですよね。主にLinuxですね。 

長谷川:そこでの実際に仕事をしてるソフトウェア構成というか、環境というか、そんなところからまずお話をお伺いしたいんですけど。

手島:その前にじゃあピクサーの会社に少し説明したほうがいいと思うんですけど、この会社は今25周年くらいなんですけど、元々はピクサーってハードウェアの会社だったんですよ。

長谷川:そうなんですか。

手島:ピクサーイメージコンピューターっていう画像処理専用のコンピューターを作って売ってたんです。

長谷川:ネクストとかじゃなくて。

手島:ネクストはまた別の会社なんですけどね。そのピクサーイメージコンピューターはUnixのSunのワークステーションにつないで使うやつだったんですよ。そういう古い歴史もあって、すごいUnixの会社なんですよね。ハードウェアの商売はあまりうまくいかなくなっちゃって純粋なソフトウェアと映像制作の会社になったんですけど、そんな歴史もあって、基本的にみんなUnixフリークの集団ですね。しばらく前まではずっとSGIの。

長谷川:SGI。

手島:シリコングラフィックスのソフト。

長谷川:はいはい、ありましたね、そんな会社。

手島:シリコングラフィックスのハードウェアとソフトウェア使ってて。まあシリコングラフィックスはうまくいかなくなっちゃったんで、今はLinuxをみんな使ってるんですけど、わりと引きずってまして、そのUnix環境を。だからアーティストとかもみんなスパルタ的にUnix教えられるんですよ。

長谷川:すごいですね。

手島:面白いですよね。

長谷川:みんな違和感というか抵抗感ないんですか、いきなりUnix。

手島:もう「そういうもんか」みたいな。今モダンなCG会社って普通はWindowsとか使うじゃないですか。あとはドリームワークスっていう別の会社もLinuxベースだそうですけど、やっぱりちょっとこの辺の会社は歴史がありすぎていまだにLinux。みんなシェルで書いてますから。

長谷川:シェルですか。今シェル見直されてますからね。

手島:そうなんですか。

長谷川:シェルコマンドだけで動く業務アプリとか。

手島:ああ、素敵ですね。

長谷川:すいません、今の話はおいといて。

手島:そう、まあLinuxなんですよ。僕も元々Unix大好きなんで、それは問題なかったんですけどね。最近メールはさすがにLinuxじゃなくてThunderbirdで読んでますけど。まあLinuxはコーディング立ち上げて、ずっとコーディングします。結構オープンソースのソフトウェアをたくさん使ってるんですよね。ソースコード管理はピクサーはパーフォースっていう結構業界では有名な商用のソフトを使ってますけど、それ以外のバグトラッカーとか自動ビルドツールとか、みんな大体オープンソースのものをうまく取り入れて使ってる感じですね。プログラムを仕事で書いてチェックインしていくわけですよね、ソースコード管理ツールに。その前に必ずみんなでコードレビューやるんですね。

長谷川:コードレビュー。

手島:お互いの同僚を1人誰か捕まえてきて、これから自分がチェックインするコードの、前とどう違うかというのを1行1行説明して意見をもらって、メモリーの開放忘れはないかとか、ネーミングの名前のつけ方は一貫してるかとか、お互いチェックして、チェックしたらその人の名前をコミットログに入れてコミットするという感じで。

長谷川:それ、行数的にはどのくらいの行なんですか。

手島:なるべくみんなコードレビューが簡単になるように少なめの行数でやりますけど、ときには100行、200行のチェックインもやる。そういうときはコードレビュー大変なんですよ。

長谷川:まじっすか。

手島:それはお互いにやるんで、僕が見てもらうこともあるし、僕が見ることもあるしで。でもそういうふうにしてお互いの仕事の内容が把握できるようにしてます。結構自分で見ると見落としちゃうバグとかもよく見つけてくれるんで、すごい助かるんですよねコードレビュー。

長谷川:200行見ろって言われたら結構大変ですけどね。

手島:ね(笑)。説明するのもまた大変なんですよね。しかもそれも英語でまたわけのわかんない。英語でコードを説明するのがこんなに大変だとは思わなかった。それもよくって、説明するのが大変だからなるべくわかりやすいように書くんですよ。日本語だとちょっとわかりづらいけど、まあ口で説明すればわかるだろ「これはこういうふうに使うんだよ」とか言っちゃうけど、僕は英語でそれを説明しづらいからもうちょっときれいに書こうと思って。

長谷川:どんどん短く?

手島:シンプルなインターフェースを一生懸命考えて作ると。

長谷川:それは結果的にはいいことにつながってますね。

手島:よかったですね。またそのあとの自動ビルドのプロセスとかもよくできていて、さっき100人くらい僕の部署がいるって言いましたけど、その中でアクティブに機能を追加してるエンジニアっていうのは30人くらいです、僕も含めて30人。残り30人くらいがわりとサポート的に社内のユーザーのバグを見つけてきたりとか、再現したりとか、あるいはビルドを専門的にやってくれたりとかっていう人たちがそれくらいです。結構人数いるんですよね。

長谷川:すごくないですか、その体制って。

手島:QA込みでやってるんですけどね。あとはプロジェクトマネージャーとかがいるんですけど。

長谷川:今のサポートって、もう要はフィールドエンジニアでもんね、やってることとして。

手島:そうですね、もうフロントラインのサポートですよね。そういうエンジニアと相談しながら進めてくわけです。彼らが手厚いサポートがあるんで、チェックインしたコードに対するテストとかもすごいよくできてるんですよ。僕がチェックインした1行1行ごとにテストのコードがいっぱい走って「君のチェックインでこの関数が10%遅くなったよ」とか、そういうレポートが自動的に来るんですよ。それはしょうがないじゃないですか、新しい機能追加してるんだから。機能拡張してるんだから遅くなるのは当然だろとか思うんですけど、一応それは説明すればいいんだけど、自動的になんかバグがないかとか。ときにはヘマをやって10倍遅くなったりとかするわけです。あるいはメモリを1MB余計に使うようになったとか。

長谷川:1MBですよね?

手島:必ずそういうレポートが来て。バグ出なければ、バグ出なくてよし。でもバグだったらちゃんとそれを直していって。

長谷川:なるほど、そういうことですね。

手島:でもなんか悔しいじゃないですか。僕のチェックインでちょっとパフォーマンスが遅くなったとか言われると。そうするとそこで一生懸命考えて「これなんとか昔どおりのパフォーマンスで機能追加できないかな」とか一生懸命悩むんですよね。そういうふうにグラフになって自分の成果が出てくるのがすごい楽しくて。

長谷川:それはチェックインしてからどのくらいのタイミングですか。

手島:大体毎晩毎晩デイリーで走ってて。

長谷川:もう次の日。

手島:もう次の日とか、あるいはその日の夕方とかにはテストのレポートが出てくるので。

長谷川:そんなに早いんですか!

手島:あとビルドチェックはずっと24時間走ってるんで、もし僕が何かコンパイルできないような状態でコミットしちゃったりすると、すぐその場で「おまえ直せよ」というメールが来ますね。

長谷川:すごい!

手島:だからまあ面白いですよね。日本ではちょっとやってなかったですけど。ひょっとしたら最近の日本の会社は。

長谷川:いや、してないと思いますよ。ちょっと詳しくはないですけども。

手島:そういうビルドエンジニアっていうのが日本ではわりと軽く見られるんですけど、こっちはちゃんとしたポジションがあるんで、とにかくアメリカはそういう個別の仕事にすごい専門のポジションがあって、それを専門的にやる人がいて、その人がどんどんスペシャリティを高めていくという。

長谷川:すごいですね。

手島:面白いですね。

長谷川:デイリーでレポートが上がってきて、それによって嬉しいときもあれば悔しいときもあって、やれることに対してレベルアップ感みたいなものを感じるときってあるんですか。

手島:そうですね、僕いいかげんベテランなんで、ヘマすると悔しいんですけど、なんかやっぱり巨大なソフトウェアなんですよ。僕の今まで作ってきたゲームよりはるかに巨大なソフトウェアを作ってるんで。こんな会社ないと思うんですよね、25年くらい続いているソフトウェア会社でいまだに同じコードベースを共有してるっていうね。なかなかないじゃないですか、そういう会社。

長谷川:なかなかないですね。

手島:本当にもう膨大なコードがあるんで、把握しきれないですよやっぱり。ドキュメントされてないユースケースとかもあるし、ドキュメントも英語だし僕はあまり読まないし(笑)コード見てなんとなく「こんな感じかな」とか、ベテランの悪いところなんですけど、勘で書いちゃうんですけど、たまに間違ってたりして。いいですね、そういうちゃんと確かめる環境があるというのは。

長谷川:そういうのがあるだけで仕事的にヘマしないようにするというのはもちろんなんですけども、そういうのをもっと超えて悔しいからやる気にさせるとか。

手島:そうそう、ゲーミフィケーションというんですか、今どきの。

長谷川:それを言いたかったんです(笑)。

手島:言葉で言うとね。本当そう。

長谷川:ゲーミフィケーションとか、レスポンスがなるべく早く来るというのはすごく重要な事だと思うんですよね。

手島:それはもう大事ですね。パフォーマンスレビューという、いわゆる人事評価みたいなのもうやっぱり近い感じでやってますから。すごい率直に同僚が「君はここがよくなかった、こういうところをやろう」みたいな。でも「ここはすごい」みたいなことやり合うわけですよ。すごいいいですね、オープンで。

長谷川:日本人だけだとなかなか。。。

手島:日本人はどんどん暗い感じになっちゃうんですよね、あれやっちゃうとね。

長谷川:なんでですかね、わかんないですけど。

手島:これは言わないほうがいいかなみたいな。

長谷川:僕ね、天気のせいじゃないかなって思うんですけど。

手島:ある、それはある。

長谷川:ありますよね(笑)天気ってすごく重要だろうなと思う。

手島:あれ大事ですね、これで雨降ってたらそんな気持ちになんないですからね。

長谷川:ソフトウェアの会社とかテクノロジーの会社は西海岸になぜ集まるのかって、やっぱりこの天気だから。

手島:本当に思います。だって昼間こうやってね、外でごはん食べてるだけで相当。

長谷川:そう、気持ちいい。

手島:相当リフレッシュします。

長谷川:これはあるべくしてある場所なんだと思いますよ。本当この辺じゃないと無理ですよね。

手島:ずっと前は僕たちの仕事は社内の映画制作のためのソフトウェアなんですけど、最近ちょっとオープンソースのコミュニティの盛り上りというのがすごく大きくなってきて、ピクサーもオープンソースのプロジェクトを始めたんですよ。これは専門的な話になっちゃうんですけど、サブディビジョンサーフェス(subdivision surfaces)といって、曲面を作るアルゴリズムがあるんですね。少ない点から曲面をなめらかに作る。例えば3つ点があったら、この3つの点をなめらかに通るような丸い線って、よくドローソフトとかでスプラインって描けるじゃないですか、あれの平面なバージョンなんですけど、CGで昔から使われてたんですよ。でもピクサーの今の社長のエド・キャットムルという人が考えたキャットムルクラークサブディビジョンサーフェス(Catmull-Clark subdivision surfaces)というのが、すごい優秀な数学的性質のあるサーフェスで、CGにはよく使われてたんですけど、ずっとピクサーがパテントを持っていて、ピクサーの中でずっと使われてたんですけど、最近それを他のコマーシャルソフトウェアも似たようなものを実装してきてるんですよね。ただパテントがあるせいで細かい部分まで一緒にならないんですよ。ちょっと似てるような、なんちゃってみたいな。

長谷川:あえて変えないといけないというのもあるんでしょうね。

手島:それがあんまり僕らにとって嬉しいことじゃなくて、というのはやっぱり僕らも優秀なサードパーティのソフトウェアがあったら使いたいわけじゃないですか。なるべくそうやってインダストリースタンダードなものができるというのは大事なことですよね。本当にWeb業界とかまさにそういうモチベーションでいろんなオープンソースのプロジェクトができてるわけですよね。新しい言語にしてもオープンソースにする理由っていうのは、標準化したいという意図があるわけじゃないですか。我々もそのサブディビジョンサーフェスのパテントのあったライブラリをフリーにして、オープンソースにしようとしてるんですよ。

長谷川:あ、しようとしてるんですね。

手島:それのベータバージョンを先々月くらいに発表して、今僕もそのプロジェクトに携わってるんです。これまた面白いですね、GitHubにレポジトリを作ってコミットして。ベータバージョンなんですけど、既にいろんな会社からフィードバックが来て「ちょっと直したんだよ、俺のチェンジをマージしてくれ」みたいなリクエストがいっぱい来て。

長谷川:ああ、そういうことか。

手島:こういう仕事が会社の業務でできるというのはすごい楽しいですよね。

長谷川:ですね。なんか前向きになれますしね、気持ちが。

手島:いやあ本当にね。

長谷川:初めのベータバージョンというかバージョン1までを作ってとりあえず出すじゃなくて、初めからそうなんですか?

手島:そうそう、結構適当な状態、適当というと怒られるな(笑)、まあ大体見せられる状態になった時点でベータバージョンということでGitHubでパブリックにしちゃって、ちょっと試しに使ってみて、今フィードバックをいっぱいもらってAPIを流して、これからリリース1.0を作ろうとしてるところなんですよ。

長谷川:それどういう人が使うソフトウェアなんですか。

手島:基本的にはCGソフトウェアを作ってるオートデスクとかの会社に使ってくれたらなと思いますし、あとはひょっとしたらゲームエンジンとかにも使われるんじゃないかなと思って。

長谷川:僕は詳しくないので分からないんですけど、ゲームエンジンに直接乗せちゃうと3D画像の処理とかができちゃうような。

手島:そういうものですよね、基本的なライブラリなんで。

長谷川:そういうことなんですね。すごい難しいことされてるんですね(笑)。

手島:(笑)いやいや。僕実際ピクサーに入るまでは、そのサブディビジョンサーフェスのライブラリを自分で作ってたりしてたんですよ。フリーウェアとして作ったりとかして。やっぱりパテントがあってすごい悔しい思いをしてたので、今自分がそのパテントを公開して実装する立場になって、すごい因縁があるなというか(笑)なんか嬉しいですよね。

長谷川:それは結構感動ものじゃないですか。アツイですね。

手島:これやりたかったんですよ。10年くらい前にやってたことがまたできるようになって嬉しいですね。

長谷川:ソフトウェアの世界って結構そうだと思うんですけど、いいものになるんであれば提供しますよみたいな流れがすごく強いなと。

手島:本当にありますね。

長谷川:…思うので、そういったものをやっていくっていうのは満足感高いと思うんですよね。

手島:会社がすごいそういう、直接マネタイズされないものに対して理解ができてきた。これが大きいと思いますね。

長谷川:時代が変わってるということですね。

手島:変わってると思います。日本もぜひ変わっていかないと。

長谷川:変わるかな(笑)。

手島:オープンソースにしていくらもうかるとかじゃないんですよ。

長谷川:そうですよね。できない計算ならはじめからするなって思います。

手島:そうそう。そういうことでまた人が集まってきますから。

長谷川:信じる気持ちとかがないと無理だと思うんですけど、ぜひ人が善であるということをまず信じて。もちろん善じゃない人もいっぱいいますけど(笑)。

手島:本当にやり方さえ間違えなければ、優秀な人材を集めるには一番そういう方法が、むしろいいんじゃないかと。

長谷川:わかりました。もうそろそろ結構時間を取っていただいたので、手島さんここまでにさせて…何か、最後一言ありますか。

手島:(笑)ほんと、カリフォルニアいい所なんで、皆さんぜひ。

長谷川:(笑)ぜひ、ご興味がある方は。

手島:仕事に来てほしいですし、遊びにも来てほしいですし。

長谷川:ぜひカリフォルニアに、サンフランシスコに来ていただければと。

手島:いらしてください。

長谷川:手島さん、本日はありがとうございました。

手島:ありがとうございました。

2012-10-17 | Posted in techghostNo Comments »